おしっこトラブルに要注意!(男の子の尿道閉塞を中心に)
前回に引き続き飲水量の低下に伴うトラブルを紹介します。
特に若い男の子が要注意!
飲水量の減少に伴いおしっこが濃くなります。また、膀胱にため込む時間が長くなるため、膀胱内での結石の形成が起きやすくなります。
代表的な結石は①ストラバイト結石および②シュウ酸カルシウム結石です。
この時期、特に問題になりやすいのは①のストラバイト結石で、比較的若い猫ちゃんに多くみられます。
結石はミネラルの結晶がくっつくことで形成されます。(水に塩を溶かしたとき、ある程度の濃さになると溶け切らなくなるのと同じ状態と思ってください。)
男の子はペニスがあるため、尿道が長くて、先端に行くほど細くなっています。砂粒状の細かい結石でも詰まってしまうことがあるのです(尿道閉塞)。こうなると猫ちゃんはおしっこを出したくても出せません。長時間この状態が続くと老廃物が排泄できず、毒素が身体にたまってしまいます。ペニスが詰まってから24時間もしないうちに立てなくなるくらいぐったりしてしまうことが多く、命の危険があります(急性腎不全)。腎臓にもかなりの負担がかかり、後遺症が残る(慢性腎臓病へ移行する)こともあります。
症状は
・何度もトイレに行くのに全くおしっこが出ていない!
・吐いてしまう(いきみ過ぎや、老廃物の蓄積により気持ち悪くなるため)
・ぐったりする(横になったまま立ち上がれない)
※ちょっとずつでも出ていれば膀胱炎による頻尿症状の可能性がありますが、ごく微量ずつしか出ていないと尿道閉塞と区別がつきにくいです。いずれの場合も速やかな受診をお願いします。
治療は(主なもの)
・閉塞を解除するため、ペニスに詰まった結石を膀胱に押し戻す(尿道にカテーテルを入れ水流を用いて詰まりをいったん膀胱に戻すことで、尿道を開通させます)。尿道カテーテルはそのまま数日間入れたままにして、そこから排尿させます。
・身体にたまった毒素の排泄を促すため、点滴を行う。
・尿道の閉塞が解除できない、ペニスが壊死してしまっているなど、最悪の場合はペニスを切除することもあります。
・食事療法による尿石の溶解を試みる。(ストラバイト結石はミネラルの制限やおしっこのpHバランスを整えることで溶解できる結石です。なお、シュウ酸カルシウム結石は食事療法では溶けません。)
こうならないために、、、
・水を飲む量を増やす(おしっこを希釈する。前回のブログ参照)
・おしっこを我慢させない。(長く貯めない)
⇒トイレ環境の見直し。(詳しくは今後ブログに掲載予定。数は猫+1個が基本。なるべく広めのトイレ。猫砂は粒が小さめが好まれる。システムトイレはおすすめしない。など)
・過剰なミネラル摂取を控える。(尿石のもとをカットする)
⇒特に煮干しなど骨ごと食べるおやつはミネラルが豊富です。猫ちゃん用に減塩のものも販売されていますが、推奨されません。
尿石症の再発予防は療法食が基本ですが、『価格が高く、継続が難しい』との声もあります。確かにその通りですが、ひとたび尿道閉塞を起こしてしまうと、治療費で1年分以上の食費代はかかってしまいますし、そもそも猫ちゃんに苦しい思いをさせてしまいます。結石が溶けて安定していれば、予防用のグレードと価格を抑えた食事でも維持が可能な場合もあります。
かかりつけの先生と相談しながらあなたの猫ちゃんに必要な食事を選択してください。