猫の病気紹介 disease

慢性腎臓病

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おしっこが増える
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水を飲む量が増える

【どんな病気?】

• 10歳以上の猫の30~40%の猫が発症すると言われています。
• 腎臓のろ過機能が損なわれ、体に老廃物がたまってしまう病気。また、体に必要な水分を保つことができなくなり、たくさんおしっこが出るようになります。

【症状】

• おしっこがたくさん出てしまう
– お水を多く飲むようになる
– 脱水を起こしてしまうことで腎臓の障害が早くなる
• 老廃物がたまり気持ちが悪くなる
– 食欲が落ちる
– ヨダレが多くなる
– 体重が減る
• その他、貧血、高血圧、口内炎、けいれんなどを引き起こすことがあります。

【診断】

• 症状と併せ、血液検査、尿検査、レントゲン検査、超音波検査を組み合わせて診断します。
• 必要に応じ、血圧測定、尿蛋白測定を行います。

【治療の目的】

• 残念ながら、一度損なわれてしまった腎臓の機能は戻ることがありません。そのため、
1. 今ある症状を緩和すること
2. 残りの腎機能を長持ちさせ、進行を遅らせること が治療の目的となります。

【治療方法】

• 食事療法
– 老廃物の原因となるタンパク質を制限し、腎臓の仕事を減らします。
• 点滴治療
– 水分が大量におしっこから失われるため、容易に脱水を引き起こします。脱水を起こすと腎臓病の悪化が早くなります。
• 薬物療法
– 老廃物を吸着する薬
– 貧血や高血圧に対する薬  など
• サプリメント

– 実際には、これら全てを実施できるわけではありません。
– 進行の度合いや症状はその子によって違いますし、また、性格やライフスタイルによっても受け入れられる治療が変わってきます。
– 治る病気ではなく、長く付き合っていく病気の一つです。相談しながらよりよい方法を考えていきましょう。

【チェックポイント】

• おしっこの量が増えていないか観察してください。
– おしっこの回数が増えていないか? (毎回しっかりした量が出ている)
– 猫砂の塊が大きくなっていないか?
• 長い時間をかけ徐々に進行する病気ですので、若い時や1年前と比べてそう言えばおしっこを片づけることが増えたかも・・・、と長いスパンで考えることが重要です。

甲状腺機能亢進症

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よく食べるのに痩せてしまう
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歳の割りに元気!

【どんな病気?】

• 内分泌疾患(ホルモンの病気)で一番多く、高齢の猫ちゃんがかかりやすい病気。
• 甲状腺ホルモンが過剰に出ることで、必要以上に代謝が上がってしまう。
• 甲状腺が腫大や腫瘍化することが原因。
• 病気の初期は元気に見えてしまうので、気が付きにくい 。

【症状】

• 年の割に活発で食欲が出る病気です。
• じゃあ、病気な方がいいじゃん!とはいきません。過剰なホルモンは心臓や腎臓などに大きな負担をかけてしまいます。
• 代謝が上がりすぎると食べても痩せてしまします。
• その他、
• 多飲・多尿(水を飲む量が増える、おしっこの量や回数が増える)
• 性格の変化(落ち着きがなくなる、攻撃的になる)  など

【診断】

• 普段の観察ではなかなか気が付きにくい病気ですが、ホルモン測定と症状から診断することが可能です。

【治療】

• 飲み薬でホルモン分泌量を抑えることが一般的です。
• その他、甲状腺を取り除く手術や食事療法があります。

肥大型心筋症

【どんな病気?】

猫で最も多い心臓病。
心臓の筋肉(特に左心室と心室中隔)が肥厚してしまい、血液をうまく全身に送れなくなる病気。
初期は症状が出ないことが多いが、病気が進んでくると食欲がなくなったり、元気がなくなったりしてきます。重症になると呼吸困難や失神、突然死を引き起こすことがあります。
左心房が拡張すると、血液の塊(血栓)ができやすくなります。血栓が流れて行ってしまうと、後ろ足や腎臓などの血管を詰まらせることで、激痛を伴う後肢麻痺や急性の腎不全を起こすことがあります(血栓塞栓症)。

【どんな猫がかかりやすい?】

発症は2カ月齢から18歳齢と幅広いが、中年齢以降で発症が多い傾向
メインクーンとラグドールでは遺伝による発生が確認されている。
アメリカン・ショート・ヘアー、ノルウェジャン・フォレストキャット、ペルシャなどでも多いとされている。
実際に診断を受けるのは雑種猫が多い(飼育数が多いため)。
メスよりもオスに多い。

【診断】

身体検査では心臓の雑音が聴診で確認できることがあるが、一部の患者では心雑音が出ないことがある。
血液検査、レントゲン検査、心臓超音波検査、心電図検査、血圧測定などを組み合わせて診断します。
確定診断には超音波検査で心臓の筋肉の厚みを確認する必要があります。
甲状腺の病気や高血圧などがあっても心臓の筋肉が厚くなることがあるため、血圧や甲状腺ホルモンも併せてチェックします。

【治療】

高血圧などによる場合を除いて、治る病気ではなく、進行性の病気です。
目的は、
①症状がある場合は症状の緩和。
②心臓への負担を減らすことで、病気の進行を遅らせる。
③血液の塊ができにくくする。
ことになります。
具体的には状態に応じ、血圧を下げる薬、不整脈を抑える薬、血液をサラサラにする薬、利尿薬などを組み合わせて使用します。

【ひとこと】

生涯付き合っていく病気です。しかし、治療することが猫ちゃんの負担になってはいけません。あなたの猫ちゃんの性格なども考慮して、必要なケアを決めていきましょう。
心臓の雑音がなくても心臓病を患っていることがあり、早期診断が難しい病気です。(逆に健康であっても心臓に雑音が出る場合もあります。獣医さん泣かせな病気です)
発症しやすい猫種の場合、定期的に検査を受けておくと安心でしょう。
同世代の猫ちゃんがいる場合は、他の猫ちゃんと比べて活動性が低かったり、運動するとすぐへばってしまったり(特に口を開いて荒く呼吸する場合は危険なサイン)するようであれば、病院に相談するといいでしょう。

糖尿病

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太っている子で急におしっこの量が増えたら要注意

【どんな病気?】

• 膵臓から出るインスリンというホルモンが足らない/効かなくなることで血糖値が高くなった状態。
• 血糖が高くても細胞はエネルギー源として糖を使えないため、いつも腹ペコ!(と、頭が勘違いを起こすので、食欲旺盛になります。)
• たくさん食べるのに痩せてしまうことが特徴。
• おしっこがたくさん出まるようになり、お水もたくさん飲むようになる。
• 太っている子がなりやすいです(理想体型の猫より4倍も糖尿病になりやすい)。

【症状】

• 多飲・多尿(水を飲む量が増える、おしっこの量や回数が増える)
• たくさん食べるが、痩せてしまう
• ふらつき(かかとを着けながら歩く)

【診断】

• 症状や血液検査(高血糖)、尿検査(尿糖)によって診断します。

【治療】

• インスリンの注射(毎日!1日1~2回が一般的です)
• 食事療法

【ひとこと】

• 猫ちゃんの場合、毎日のインスリンの注射を続けていくことで体質が改善され、インスリン注射が不要になることもあります。
• 重症化すると糖尿病性ケトアシドーシスという病気に進行し、集中治療が必要になることもあります。
• ダイエットもしていないのにどんどん痩せて、おしっこの量が多かったら可能性大!

尿石症

【どんな病気?】

• おしっこの通り道に結石ができる病気
• 結石のある場所によって名称が変わります。(腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)
• 尿路の感染症の他、ミネラルの多い食事や水を飲む量が不足していることなどが原因となります
• 全体の8割以上がストラバイトとシュウ酸カルシウムが占めており、腎臓結石・尿管結石ではそのほとんどがシュウ酸カルシウムといわれています。

【症状】

腎臓結石:あまり症状は出ません。時に慢性腎臓病や腎盂腎炎の原因になります。
結石が尿管に移動するリスクがあります。
尿管結石:完全に閉塞してしまうと、かなりの痛みを伴い、急速に状態が悪化します。
     吐き気、食欲不振、おしっこの量が減る など
膀胱結石:頻尿、血尿、排尿時の痛み など
尿道結石:膀胱内の結石が尿道に詰まった状態で、特に男の子で発症します。
(ペニスの尿道はかなり細く、0.5mm程度。砂粒状の結石でも詰まることがあります。)
     完全に尿道が閉塞してしまうと、おしっこの姿勢をしても出なくなり、急速に状態が悪化します。
身体から老廃物を出せなくなってしまうと2~3日で死亡してしまいます。

【治療方法】

• 食事療法
  ストラバイトは食事療法で溶けやすい結石です。また、再発予防にも使います。
  シュウ酸カルシウムは食事療法では溶けないため、それ以上大きくさせないこと、数を増やさないことが食事療法の目的となります
• 手術による摘出
  食事療法に反応しない場合や、早期の摘出が望ましい場合選択されます。
• 尿道閉塞を起こした場合は、カテーテルを用いて水流で膀胱に結石を戻す必要があります。

【おうちでできる対策】

飲水量を増やす工夫
おしっこが薄くなることで、ミネラル成分の析出(結石になること)しにくい環境になります。
①器の種類を変えてみる
一般的には陶器の器が好まれる傾向です。
②器の数を増やしてみる
複数の部屋や、猫ちゃんが好んでいる場所の近くにも置いてみましょう。
ワンちゃんが同居している場合は、ワンちゃんが届かない場所にも設置するといいでしょう。(他の動物の唾液の臭いが付いた器は嫌がります。)

その他、蛇口から垂れる水滴・浴槽の水・人のトイレの水などを好んで飲む猫ちゃんがいます。流れている水やたっぷりな水はきれいなものと感じる様です。その場合、ウォーターファウンテン(還流式の給水器)を利用してみてもいいでしょう。
飲水量が減りがちな冬場は特に注意が必要です。

・おやつにも注意!
おやつの中にはミネラルの量が不適なものがあります。ニボシなど骨ごと食べるようなものは特に注意が必要です。

【トイレの環境整備】

トイレを我慢すると、おしっこが膀胱にたまる時間が長くなり、膀胱結石になりやすくなります。
気持ちよくトイレを利用してもらうために
①こまめな掃除
少なくとも1日2回はチェックして下さい。排泄に気が付いたらなるべくまめに掃除をして下さい。猫ちゃんも汚いトイレでは排泄したがりません。
また、カバー付きのトイレはニオイがこもってしまい、嫌がる猫ちゃんもいます。
②数の増設
今いる猫ちゃんの数+1が理想的。
仲のいい猫ちゃん同士であれば共有することに抵抗がない場合がありますが、一般的には他の猫ちゃんの排泄物のニオイの付いたトイレは敬遠されます。
その際は近い場所にまとめずに離れた所にも設置してみて下さい。あまり近い場所では1つのトイレとしてカウントされてしまうかも。
③大きさや入り口の高さの確認
理想の大きさは猫ちゃんの体長(頭~お尻までの長さ)×1.5
小さすぎると、トイレの縁に足を乗せて排泄することがあります。窮屈だよ、のサインかも。
高齢になってくると、ちょっとした段差が苦痛になることがあります。トイレの失敗が増えてきたら、入り口が低いものも用意してみて下さい。
④猫砂の種類
いろいろなタイプの猫砂がありますが、好みの猫砂を見つけてあげましょう。一般的には粒が細かい猫砂が好まれるようです。
また、2cmくらいの深さになるように敷きつめてあげましょう。
⑤設置場所の確認
騒がしい場所や人の目につきやすい場所は落ち着いて排泄ができなくなります。なるべく静かで、ゆっくり排泄できる場所に設置しましょう。

猫のフィラリア症(犬糸状虫症)

【どんな病気?】

  ワンちゃんで代表的な感染症ですが、猫ちゃんにも感染することが分かっています。
  蚊に刺されることでフィラリアの幼虫が体内に侵入し、成虫になると心臓(右心系や肺動脈)に寄生します。幼虫や成虫が主に肺を障害する感染症。
  たった1匹の寄生でも突然死することがある。
  ワンちゃんと異なる点は
  猫ちゃんの免疫で排除されることが多く、感染しにくく、成虫になるまで成長しにくい。
  成虫まで成長し、心臓に寄生するものは1~3匹程度にとどまる。
  寄生する数は少ないが、ひとたび症状が出ると重症化しやすい。
  成虫が子虫を生み出すことはほとんどない。
  寄生する数が少ないため、診断が難しい。

【症状】

寄生する数が少ないため無症状のことも多い一方、激しい症状を出すこともあります。
第1病期(HARD:犬糸状虫随伴呼吸器疾患)
体内に侵入した幼虫が肺動脈に到着直後、その大半が死亡し、死滅虫体が肺障害を引き起こす。
⇒食欲不振、元気消失、嘔吐、咳、呼吸困難など
第2病期
わずかに生き残った幼虫は成虫となり、心臓で2~3年生存し、その間は症状を示さない。寿命が尽きると肺に重度の炎症や肺血管を詰まらせてしまう。
⇒急性の呼吸困難、突然死。
第3病期
第2病期を乗り越えても、肺の障害は完全には回復せず、慢性の呼吸困難が続いてしまう。

【診断】

症状から病気を疑い、血液検査(抗体検査・抗原検査)、胸部レントゲン検査、心臓超音波検査を組み合わせて総合的に判断しますが、確実な診断方法はありません。

【治療】

確立した治療法はありません。
呼吸困難などを緩和する対症療法を行いますが、完治は難しいです。

【予防】

猫ちゃんでは首の後ろに塗布する予防薬が認可されています。
適切な期間、予防薬を投与することで確実に予防できる病気です。

【ひとこと】

非常に診断が困難で、治療も緩和的なものしかないため、定期的な予防が重要です。
逆に言うと、予防さえしっかりできていれば心配する病気ではありません。
感染の全体の約4割が室内飼いの猫ちゃんだったという報告があります。(人だって家の中で蚊に刺されますよね。猫ちゃんも同じです。)
猫の10頭に1頭がフィラリア抗体陽性であったという感染報告があります。(少なくとも幼虫が一時的に体内に侵入していた証拠となる)

中毒

自然環境にある植物には毒を含むものが多いため、それを食べる牛や馬などの草食動物は解毒能力に長けています。
一方、猫ちゃんは捕食する野鳥や野ネズミなどの獲物にもともと毒がないため、解毒能力が高い必要はありません。
そのため、草食動物や人には無害な食べ物や薬物でも中毒を起こしてしまうことがあります。

【人の食べ物】

玉ねぎ類(玉ねぎ、長ネギ、ニラ)
加熱しても毒性が残るので注意
血液中の赤血球が壊れるため、貧血や血色素尿を引き起こします。
チョコレート
テオブロミンという成分が心臓・腎臓・神経系に影響を与えます。
嘔吐、下痢、ふるえ、けいれんなどを引き起こします。
カフェイン(コーヒー、紅茶、緑茶など)
興奮作用があり、心臓や神経系などに影響を与えます。
ブドウ・レーズン
成分は特定されていませんが、腎臓への毒性が報告されています。
アルコール
わずかな量でもうまく分解できません。

【人の薬】

風邪薬・頭痛薬
アセトアミノフェンという成分が貧血を引き起こします。
猫カゼと言われたからといって、ヒトの風邪薬を与えてはいけません。
その他の薬・サプリメントでも身体の小さい猫ちゃんが誤って飲んでしまうと過剰に作用が出てしまうことがあります。
ご家族に常備薬がある場合は、猫ちゃんが出入りしない場所に保管するなど管理に気をつけて下さい。

【観葉植物】

ユリ
チューリップ
シクラメン
アイビー
ポインセチア
アロエ
ツツジ
アサガオ
ポトス

などなど、案外身近な観葉植物にも危険なものがたくさんあります。
特にユリ科植物は、花瓶の水を飲んだだけでも腎不全を起こすことがあります。

【※安全とされている観葉植物 】

猫草(えん麦)
キャットニップ
ミント
パキラ
カポック
シュロチク
アレカヤシ
オリヅルラン
バラ

などがありますが、あまり大量に摂取させるのは望ましくありません。嘔吐や下痢の原因となることがあります。
また、特異体質による異常がでることもあります。